好きな人の名前って、それだけでしあわせの呪文なんだね

頭は割れるように痛いし、足には記憶にない痣だらけ。
川島なお美的に言う所の、私の血はワインが流れている感が否めません。
太陽が眩しい。
こんな日は部屋で本を読もう。

十篇が収録されている短編集です。
テーマは「30代(前半)の恋」です。



本を読み始めた頃は、唯川恵とか、村山由佳山本文緒など恋愛小説の王道をよく読んでいました。
最近は、趣向が変わってしまったので恋愛小説から遠ざかっていました。
久々の恋愛小説、とても良かったです。
この著者の作品でスローグッドバイ (集英社文庫)という、これまた十篇の恋愛小説短編集があるのですが、それも好きでした。
個人的には、今回読んだ作品の方がお気に入りです。



解説を読んで納得だったのですが、このテーマがとても絶妙です。
仕事の責任も、やりがいもあり、ただひたすら二十四時間、大好きな人のことを考え続けるなんて無理。自分の生活リズムや趣味も確立されて、「あなたに全部合わせるわ」なんてとても無理。
中略
本書に書かれている恋が決してうっとり夢心地になるようなドラマティックなものではないこと。主人公たちはみな、それぞれの「譲れない日常」を生きていて、その中で恋をします。(藤田香織による解説より抜粋)



特に「ふたりの名前」「デートは本屋で」が素敵でした。
良い作品を読んだ後は幸せです。