人間なんだから、つんのめるときもあるよ。それも含めて私なんです

誘惑に弱いです。
この本の存在を知って、即本屋を巡りました。
4軒目で見付けました。

ぼく、牧水!  歌人に学ぶ「まろび」の美学 (角川oneテーマ21)

ぼく、牧水! 歌人に学ぶ「まろび」の美学 (角川oneテーマ21)

1年に1、2冊は新書を読みます。
新書は、妙に興味を引く題材とかがあって。
意外と、本屋の新書コーナーを冷やかすのが好きです。
この本の興味って、堺雅人以外の何者でもないです。



俳句とか、そういうの全くわかりません。
若山牧水も、名前と教科書に載っていたこの歌しか知りません。
白鳥は哀しからずや空の青海のあをにも染まずただよふ
この本は、若山牧水の同郷である堺雅人とその恩師の伊藤氏がその魅力を語り合うという内容。
しかも、酌を交わしながら。
その、まったり感が良いです。
若山牧水という歌人は、相当な酒好きでもあり、そのあたりでも趣旨に合っています。
牧水の魅力は勿論、堺雅人の役者としてのこだわりだったり、そういう所にも触れられてるあたりが憎い。
私が、初めて生で拝んだ「蛮幽鬼」の公演中だったらしく、それにも話題が及んでいたのが更に嬉しかったです。



まずは、主題でもある若山牧水について。
この対談で、牧水の人となりだとかがすんなりと伝わります。
破天荒で、魅力的な人物です。
酒と旅を愛し、不倫の恋に敗れた恋に傷付いたこともあってりして。
歌人は、薄幸の苦労人だったり、頭の固い人というイメージを払拭。
歌の解説もわかりやすくて面白かったです。
国語の授業では、そんな解説は一切なかったですから。
そんな授業だったら、少しは勉強も楽しかったのかもしれません。
伊藤先生の授業を受けた生徒さんが羨ましいです。
個人的には、「酒好き」という点で親近感が。
「固形物を食べて生きている人間はまだ下等。高貴な米のエキスの液体で生きるようにならなくちゃ人間はダメだ」
私は牧水のこの迷言に感動しました。
素晴らしき飲兵衛魂。
こんな私は人間としてダメ、かも。



さて、ついでに堺雅人の魅力にも言及しておきます。
私は、彼の演技を見るのが大好きです。
見た目とかそういうのではなくて。
虜になる過程として、「脇役なのに、なぜか気になる」から始まり、「次はどんな役をやるのか」という期待感に変わっていきました。
善良な人の役から冷酷な人の役まで、何を演じても違和感がない所が最高に楽しい。
そこまで柔軟に対応出来る役者さんは、中々いないと思います。
私は、小説を読んでいると勝手に「実写化するならこのキャスト」と考えてしまいます。
どの小説にも堺雅人が演じたら素敵だ、というキャラが必ずいるという守備範囲の広さ。
個人的には、映画「ジェネラル・ルージュの凱旋」の速見役がツボです、惚れます。
演技も去ることながら、文章も巧い。
早稲田に入学出来るだけあって、頭の良さが滲んでいる知的な文章も好きです。
相当な読書家でもあるようです。
このままだと、原稿用紙10枚分は軽く語れそうなので、無理矢理締めます。
この本と「文・堺雅人」を読めば、彼の演技に対する姿勢と考え方とかが伝わりますので必読。



最後に、この本で「ストレス」について御二方が語っている内容が響きました。
伊藤先生のひと言「自己否定に向かわなければ悩みはむしろ自分を発展させる原動力になります」とても良い言葉だと思いました。