掌に蝶

先日の話。
商談を終えて、緊張が緩んだときのこと。
商談相手の業者さんから「ずっと気になっていたんですけど、素敵ですね、これ」と言われました。
これは、私の手元にあった赤い革のシステム手帳です。



遡ること、7年前。
私が社会人1年生だったころの話。
右も左も常識も、何一つわからないまま、客先でも社内でも叱られていたような頃。
大変お世話になった直属の上司が持っていた物。
使い古された革のシステム手帳。
予定と商談内容が、綺麗な文字で埋め尽くされています。
相当年季が入っているらしく、その手帳は良い具合に色褪せていて。
それを見た私は、「格好いいな」と思いました。
早速、真似して革のシステム手帳を購入。
安月給だったのですが、思い切って高い物を買いました。
落ち着いているけれど、少し華やかな色が気に入った、赤い色。


しかし、買ったばかりの手帳は綺麗過ぎて、格好悪い。
大した予定もなくて、書き込む内容もなくて。
当時の自分を映しているようで。


年月が経つにつれ、仕事にも慣れてきて、予定を書き込むことが多くなりました。
真新しかった手帳も、だんだん馴染んできました。


会社が変わっても、まだその手帳を使っています。
すっかり草臥れてしまったけれど、愛着があるので買い換える気がしない。
ずっと一緒に仕事をしてきたこの手帳。
汗と涙が染み込んだ、世界で一つだけの風合い。



商談相手曰く、長く使えば使う程に味が出るような手帳の購入を検討しているとのこと。
色んな客の手帳を見て参考にしているとか。
それで、目に留まったのがこの手帳。
「こういうのを求めていたんです。色も定番の茶色とかじゃない所が良いです」と。
まさか、他人に褒めてもらえるとは思っていなかったので、とても嬉しかったです。
何だか、今までして来たことを認めてもらえたみたいで。
この手帳も、今の自分を映しているのでしょうか。



私用の手帳は、いたってシンプル。
以前は、少しでも可愛い物、お洒落な物を求めて、年末に何軒もお店を探し回っていたものです。
今は、実用性重視です。
マンスリータイプで、同じ会社の物を使い続けて3年目。
色はシルバー。
雑貨屋で見付けた、ペンホルダーが付いているバンドと一緒に愛用しています。
勿論、来年も同じ手帳を買いました。
来年の手帳に、一番初めに記した予定。
とても大切な人の、お祝いの日。
縁起が良い書き出しとなったので、来年も素晴らしい年になることでしょう。