全力無意味

キケン

キケン

面白かったです。
最後のあれ、反則でしょ。
でも、すごくいい。
あれがなければ、読みやすい小説で終わってました。



学生時代、しかも大学の。
そんな時期の、楽しい思い出。
馬鹿ばっかりやったけれど、楽しい思い出。
それは、当人にしかわからなくて、他人に説明したところで、その可笑しさは理解しにくい。
そんな微妙で繊細な時期が上手く表現されていました。



思えば、大学生だったころが一番悩みがなかったと思います。
最低限の勉強をして、仲間がたくさんいて、自分の居場所があって。
それなりに自由で、在るべき束縛も苦にならなくて。
贅沢な4年間を過ごせたので、親には感謝しています。
ごめんよ、投資の割にはこんな完成品になってしまいました、とは思いますが。



それでも、あの時期に戻りたいとは思いません。
楽だったけれども、いつか終わってしまうから。
戻っても、それが終わる淋しさをもう一度味わう気にはなれない。
もう二度と就職活動したくないし、新入社員を経験するなんて正気の沙汰ではありません。
楽しかったあの記憶があるから、今を頑張っている訳で。
あのとき共有した何かがあるから、今も繋がっていられる訳で。
それが、私にとっては宝物で。
多分、それはこの小説の主人公と同じ気持ちなんだとうと思います。