ストーカーが私のような女を指すのなら、世のなかは慈愛に満ちているんじゃないの

いつの間にか読み終わっていました。

愛がなんだ (角川文庫)

愛がなんだ (角川文庫)

最近、恋愛小説なるものを読んでいなかったので、たまには読んでみようと思い、選びました。
女流作家の中で角田光代はベスト3に入る位好きです。
例えるならば、江国香織は非現実的なところが良くて、角田光代は現実的なところが良いです。
登場人物の視点が私と近いらしく、そこに好感が持てるのです。



この話は、全力疾走片思いをしている女性の視点で描かれています。
端から見れば、俺様主義で、とんでもないダメ男に振り回される主人公。
少し表現が古いのかもしれませんが、都合のいい女というやつです。
それでも彼女は幸せであり、嫌いになれるはずもなく。
読んでいて、彼の無神経さに腹が立ち、彼女のお人好しさにもうんざりします。
彼のことが世界で一番最優先事項だから、仕事中でも呼ばれれば飛んでいく。
彼が喜ぶのなら、彼が好きな人と上手くいくように協力するし、彼女へのプレゼントまで買いに行ってしまう。
どうしようもなく一方通行で、どうしようもなく報われていないのです。



私は主人公ほどに、恋愛至上主義者ではないにしろ、少なからず共感してしまう節もしばしば。
片思いをしたことのある人なら「あるある〜」と頷いてしまうのが、角田節。
例えば「もうあんな男やめた!!」と思っても、相手から連絡が来て「今から会おうよ〜」って言われたら「仕方ないなぁ。丁度私も暇だったしいいよ」(←就職試験直前だったとしても)と答えてしまったり。
そして、彼女が最後に選んだ選択にも共感。
恋愛のカタチとか、幸せとか愛だとかって、答えは一つじゃないと思いました。



この件名もそうなのですが、濃い小題を読んだだけでも痛々しかったです。
悲痛な恋愛をしている人が読んだら、少し元気になるかもしれないです。