嘘も方便①  〜お願い営業編〜

7月はウチの会社の半期決算に当たります。
ようやく辛い月末が終わり、伸び伸びです。
去年の7月末も、売上げを作るのに一苦労でしたが、今年も色々ありました。
1話では収まりきらないので、初の試み、オムニバスでお送りします。
但し、書いていて飽きなければ。



上半期で何とかしないと、その借金が下半期に皺寄せされるので、7月の数字は重要です。
折しも、上半期の数字底上げを狙った、営業のモチベーションアップ対策として、社内キャンペーンをしていました。
ここ1年に新発売された十数種類の商品が対象となります。
各商品ごとにノルマがあって、80%、100%、150%達成ごとに5ポイント、つまり、1アイテムで最大15ポイントもらえます。
評価の仕方は獲得ポイント数、ノルマ達成率の2種類あります。
優先順位はポイント数です。
商品といっても価格は様々で1つ売って十数万するものから、千円少しの物がある為です。
更に、そのキャンペーンは個人別、拠点別、商品別に賞が設定され、お小遣いがもらえます。



私が所属する東京支店は、今月も数字が厳しく、頭を悩ませていました。
どう頑張っても全体で100万以上足りない状況でした。
しかも、他の拠点の倍近い人数がいる為、チームワークもよろしくないです。
そんな中、意志統一と賞金を賭け、キャンペーン拠点賞3位入賞(3位まで賞金が出ます)を目標に頑張ることにしました。



そんなこんなで、7月最終週は大変でした。
「あと1ケース売ればポイントもらえる」「一人あと6枚売れば拠点のポイント獲得」と、無理矢理に在庫を取ってもらったり、大特価を出して売りさばいたり、とにかくお願いしまくる「お願い営業」ばかりでした。
なかなか辛い仕事ではありますが、何とか言い訳を考えたり、懇願して在庫を取ってもらえたりすると、それが快感になってきます。



そんな私のお願い手法を紹介します。
①「来月分、今月に回して下さい」
来月売れるので、不良在庫にならない商品で適用。
お願い営業の基本です。
これは、よくあることで、たいていは前倒し出来ます。


②「あと3枚買ってもらえたら目標達成なんです!!」
ハードルを低くして当たる業者の数を増やし、買ってもらう手法です。
塵も積もれば数万の売上げです。
こんな少量を断るともケチだと思われる、という業者の心理をくすぐる微妙な数量設定がポイントです。


③「これ売らないと会社に戻って来るなと言われていて…」
演技力が必要です。同情を引かなければいけません。
お願いしてダメだったときの捨て台詞です。


④「お願いします!!これ買ってくれたら、次の月にサンプルたくさんあげます」
これは後で会社に嘘をつかなければいけません。


⑤「〇〇さんしか頼める人いないんです。もう5件断られました…」
もちろん、嘘です。


⑥「桃、美味しかったですね」
今回のお願い営業で、一番の被害者は、先日桃土産をあげた業者です。
たまたま「この前もらった見積なくしたから再Faxして」と言われたので、細工をして再度Faxしました。
直後に電話が。
業者「なんか関係ない商品の見積が加えられてるんだけど?」
ねじ「あ、発注入れておきました。絶対売れますから、コレ」
業者「…今のとこ売り先ねぇよ。困るんだけど」
ねじ「桃、美味しかったですね」
業者「…随分と高い土産になったな」
ねじ「感謝してます」
これは関係が良い人にしか使えませんが。
もちろん、押し込んだからには、売り先を見付けてくるフォローはします。


営業をしていると、嘘が上手くなるような気がします。
いかに安く仕入れるか、いかに高く売るか。
目的の為には、多少の嘘も厭わなくなります。



去年は業者との付き合いも上手く行ってなかったので、お願いする先はほとんどありませんでした。
しかし、今は無理を言っても助けてくれる人がたくさんいました。
そのことが嬉しかったです。
ある部長さんは「この忙しい月末に、たった1万そこそこの物件取りに行ってやったんだぞ。有り難く思え」と言われました。
私は電話口で深々お辞儀をしました。



そんな営業をして、何とか上乗せ20万弱。
まだまだ、支店のノルマには届きません。



多分続きます