嘘も方便③ 〜不可能を可能にする賭け編〜

外で思い切り羽を伸ばして、帰社しました。
ちょうど、キャンペーンの結果が出たときでした。
たまたま居合わせた社長に「おめでとう。東京支店は獲得ポイント2位だよ」と言われました。
金曜の時点では3位も危うく、端から期待はしていなかっただけに、先輩と思わず「…何が起きたんですか?」と聞き返してしまいました。
最後の悪あがきが効いて、堂々2位になっていたのです。
先輩と「やった〜!!金、金!!」と喜びました。
お金に取り憑かれた人間の底力の凄まじさを知りました。



私と直属の上司との間で賭けをするのが流行っています。
お題は「不可能を可能にできるか」です。
ある日上司が、次の日に普通では有り得ない商談をしてくる、と話していました。
確かに無謀な商談なので、難しいだろうな、と思って聞いていました。


上司「ねじまきさん、その商談成立したら何くれる?」
ねじ「えっと…煙草1箱」


その会話が発端でした。
次の日、上司の商談が成立し、私は煙草を献上する羽目になりました。



上司「次は何にする?俺があのキャンペーン商品1位ってのはどう?」


そのとき、現在1位の人と上司との差は15個以上。
在庫のお願いもしにくい商品で、無理だろうと高を括り承諾しました。


ねじ「煙草3箱で。私にも何か下さいよ」
上司「う〜ん。キャンペーンの個人別ポイントで、上位半分以内に入るってのは?」


私はキャンペーン当初、全く意識せずに仕事をしていた為、はじめの1ヶ月は最下位を独走していました。
途中で、さすがに恥ずかしくなり、本腰を入れましたが、残り1週間の時点では下から数えた方が早く、36人中20位あたりを漂っていました。



そして、迎えた最終日。
上司はネタを隠し持っていたらしく、見事1位でした。
騙されました。
嘘と演技が上手いのも、出来る営業の証拠とでも言いましょうか。
半ば諦めていた私はというと、土壇場のミラクルと、地道な押し込みのおかげで、14位まで上り詰めました。
当初のダメダメっぷりから考えれば、まずまずの快挙です。
物欲に取り憑かれた人間の底力の凄まじさを実感しました。



上司「ねじまきさん、景品何がいい?ピアニッシモ?」
ねじ「いえっ!!私、禁煙する(予定)なので。水がいいです。Vittel(会社近くの自販機で100円)じゃなくて、高いやつです。150円以上のやつでお願いします」


私は、今ミネラルウォーターをよく飲みます。
しかし、貧乏なので、128円以下の銘柄に限られているのです。



今日、出張から帰ると、デスクの上にペットボトルが3本。
「Contrex」が置いてありました。
硬度1551(㎎/L)の硬水で、とても飲みにくい水です。
確かに、割り高ですが、飲み干す自信ありません。
本当は、流行の酸素が入っている奴が良かったのですが。
微妙な気持ちを抑え、有難く頂戴しました。
営業ですから、嘘も方便です。