嘘も方便④ 〜月末の結末編〜

随分と引っ張りましたが、これでおしまいです。
見事、キャンペーンの拠点順位2位を獲得したのですが、まだ続きがあります。



夜になり、他の営業が次々帰社しました。
その度に結果を報告すると、揃って最初の一言が「何が起きたの?」でした。
てっきり、他の拠点も最後に追い上げると思っていた為、3位も危うい、ましてや2位なんて有り得ないだろうという心理が働いての発言です。
蓋を開けてみると、どうやら他の拠点は数字を詰めて来た気配はない様子でした。
「あれでいっぱいいっぱいだったのかな〜?」
「この拠点なんて、あと少しだったのに勿体ないね」
「あと少しで賞金もらえたのにバカだなぁ」
などと話していました。
しかし、2位は2位。
予定外のお小遣にみんなで喜びました。



打ち上げはいつ何処でしようか、と盛り上がっていると、営業部長(金庫番)が降りて来ました。
部長「東京支店、最後の追い上げ凄かったらしいじゃん。社長から聞いたよ。おめでとう」
ねじ「ありがとうございます。今みんなで賞金の使い道(飲み会)考えてたんですよ!!〇〇(部長の名前)さんも来て下さいよ」
部長「そうだな。でも、賞金は発生しないの知ってるよな?」
一同「…え?!」


そういえば、キャンペーン概要に、「賞金は100%達成した者(拠点)にのみ取得権利が得られる」とあったような。
東京支店はポイントこそ2位でしたが、達成率は約98%。
つまり、賞金を得る資格がなかったのです。
営業が8人もいたにも関わらず、誰ひとりそのことに気付きませんでした。
ただ、支店長は知っていたらしいのですが、それを言ってしまうと皆の士気が下がってしまうので言うに言えなかったそうです。



どうりで、他の拠点の追い上げがなかったわけです。
達成率100%が無理ならば賞金はもらえず、わざわざ業者に泣いてもらう必要はないのです。
「え…あれだけ無理矢理入れたのに」
「あの商品なんか2ヶ月分在庫取ってもらったんだけど、来月からどうすれば…」
「来月何も物件ないっすよ」
「バカだったのはウチらなんだね」
意気消沈する面々。
このキャンペーンのおかげで、売上げも予定より増えたので、結果良ければ全て善しなのかもしれませんが。
単純で間抜けな集団だったからこその結果です。
それはそれで、私は楽しかったので善しとします。



気付いたら、梅雨明けしていて、夏になっていました。
こういう季節はビールが一番です。