あー、逃げてぇ

そんなにページ数も多くなかったので、すぐに読み終えました。

この著者も結構好きなので、リピートです。



この話は、「何ごともつつみかくさず」がモットーである一家の内情を書いた作品です。
姉、父、母、祖母、父の愛人、弟、それぞれの視点で語られるオムニバス。
順を追うごとに露見する秘密と人間模様が怖くもあり、面白いです。



そもそも、秘密を持たない人はいるのでしょうか。
誰にだって秘密の一つや二つあると思います。
秘密と言っても、種類があると思います。


①誰にも言えない秘密
逆に言うと、誰も知らない、自分だけが知っている秘密です。
それは、自分のコンプレックスであったり、隠蔽した失態だったりします。



②勝手に秘密
自分と、第三者しかしらない秘密です。
たまたま、第三者の秘密を目撃してしまったときのことを指します。



③人によって言えない秘密
関係ない人には話せても、特定の人には言えない秘密です。
捉え方によっては、関係ない人には話せるので秘密ではないのかもしれません。



多分、人が多く持っているのは③ではないかと思います。
私は、「王様の耳はロバの耳」のように、誰かに言わないと気が済みません。
他人の秘密は漏らしませんが、自分の秘密は漏洩し放題です。
人によって「これは教えた。それは秘密」というように秘密を使い分けしてしまいます。
人と人を「秘密」という視点から眺めてみると、結構面白い構図が出来ます。



最後に、何となく気に入った文章を抜粋します。
最終話の主人公である、弟の思考です。
「だってさ、だれも憎んでいないのに、ぼくらは憎むってことを知ってて、とくべつさびしくなんかないのに、さびしいってどんなことかわかるだろ。」