「手」と「紙」でできている

これは、これは。
私のストライクゾーンど真ん中な作品でした。

代筆屋 (幻冬舎文庫)

代筆屋 (幻冬舎文庫)



この話は題名そのまま。
売れない小説家が、手紙の代筆をします。
依頼者の事情は様々。
それは、恋文であったり遺書であったり、亡くなった人になりすましたり。
代筆は、自分の言葉ではないけれど、間違いなく自分の気持ち。
他人の目を通して、今の自分を再確認出来るのです。



とにかく、この作品大好き。
今は、メールが普及しているので、「手紙」という伝達手段は減少傾向にあります。
メールは非常に便利です。
でも、電子文字でしかありません。
文章以外に感情を伝える手段がないのです。
手紙は、筆跡や便箋など、色々な所から相手の気持ちが伝わってきます。
また、この作品の文章はとても綺麗で、日本語の美しさも再発見出来ます。
筆不精になりつつある人たちに是非、読んでもらいたい作品です。



実家に帰省しているときのこと。
暇だったので、置き去りにされている勉強机の中を漁っていました。
そうしたら、たくさんの手紙が出てきました。
違う学校に通っている友達からの手紙、授業中にやり取りした手紙など。
しかし、当時の気持ちや状況、自分が重要としていた問題などが鮮明に蘇ります。
これも手紙の持つ力だと思います。
懐かしいと読み耽っていましたが、だんだん恥ずかしくなってやめました。
若いって恐ろしい。
メールは、携帯が勝手に消去してくれるけど、手紙は本人の意思なくしては処分出来ない。
そんなところも手紙は良いと思います。
今の中高生は手紙なんか書かずにメールで「送信」が主流なんですかね。
だったら、少し悲しいです。



仕事のファックスでも何でも、手書きの文字は嬉しいものです。
その人にしか書けない「字体」が拝めます。
字体って、意外と人の性格を現すと思っています。
字が汚いとかは関係なく、字にも好感ってありますよね。
そんな私は恐らく「字フェチ」です。
例えば、パソコンや携帯ならば漢字変換は容易に可能です。
しかし、手で文章書くとどうでしょう。
読むことが出来ても書けない漢字って多いんですよね。
本人の常用漢字がわかるのも少し楽しい。



ポストにダイレクトメールや光熱費の請求書でもない、切手の貼られた「手紙」が届くととても嬉しいものです。
メールで送れば手間もお金も掛からないのに、わざわざこういった手法を使うという心意気。
久々に、誰かに手紙を書きたくなりました。