初デート

福造は、深いため息を吐き出した。


昔は色々な戦争に行き、命がけの仕事をしてきた。
数々の相棒と出会い、色々な瞬間を切り取ってきた。
ここ最近は、隠居生活を送っていた。
いい加減、外に出たくなっていた頃、新しい相棒を紹介された。
カメラ初心者の女性である。
カメラの腕と知識は未熟だが、写真は好きらしい。
この小娘となら、のんびり余生が過ごせる気がした。
ついでに、カメラの基礎を叩き込んでやろうと、密かに意気込んだのが先週の話。


この日は、晴天で彼女の仕事も休みらしい。
この爺と、散歩に行きたいと云う。
暑いのは苦手だが、まんざらでもない気持ちで同行したのだった。
それがどうしたことか、彼女はカメラの使い方を全く学習していないのに撮影に挑もうとしている。
満足にフィルムも巻き上げられない。
福造の機嫌は悪くなり、シャッターを押させないという抵抗を試みる。
挙句の果て、フィルムの交換方法すら知らないときた。
彼女が何やら不穏な動作を始め、福造があっと思った瞬間に、入っていたフィルムを駄目にしてしまった。
以前の相棒が撮った写真もあったのに、それも全て日の目を見ることはなくなったのだ。
見よう見まねで新しいフィルムを入れられたが、全くなっていない。
こんな入れ方で写真が撮れるものか。
福造の怒りは頂点に達する。
初日から、福造はこの無知で無謀な相棒を叱りつける。
彼女も反省をしている様子だったし、以前の相棒にも諭されたこともあり、とりあえずは和解をした。
しかし、この先の不安は拭えない。
のんびり余生を過ごすどころか、とんでもない相棒を押し付けられたものだ。



という訳で、Nikon Fと初散歩に出掛けたのですが、散々な結果に。
Fだけに、この爺さんを「福造」と名付けました。
前から気になっていた谷中に行ってみました。
残念ながら、福造で撮れた写真はありませんでした。
いいショット、いくつかあったのにな。
仕方ないので、今回はサブに回っていたPENでの写真を採用します。

谷中ぎんざ商店街。
人もたくさんいて、活気がありました。
猫の溜まり場として有名な、夕やけだんだんには猫おらず。
暑かったからかしら。



福造と喧嘩しつつ、谷中霊園で猫を探してみる。
猫をならべてみましょう。

暑い日は、涼しげな日陰にいること多し。
夕方とか、もう少し気温が涼しくなればもっと出会えたかもしれません。
今度来るときは、福造でリベンジです。



歩き疲れた身体には美味しいお酒と料理を。
新宿で待ち合わせ中に写真を撮って遊んでました。

動いている人を撮るのは難しい。



そんな訳で、今度はフィルムの巻き方も入れ方も大丈夫。
露出計の使い方もわかってきました。
次はどこに出掛けようか、福造爺さん。