サヨナラだるま愛好会

福造は、上機嫌だった。
昨日の公約通り、相棒は彼を外に連れ出した。
「寒い、寒い」と連呼する割りには、軽快にシャッターを押す。
そこには、色とりどりのダルマと、たくさんの人が犇めいていた。
相棒のように、撮影目的の人も多い。
やや平均年齢が高い気もするが。



そして、福造と相棒のちぐはぐな組合せに興味を示すようだ。
一昔前は、皆フィルムカメラを使っていた。
しかし、今はデジタルカメラに移行してしまっている。
それでも、福造のようなレトロカメラを見ると心が躍る。
それを持つのが自分の娘と同年代の若造なのだから、つい声を掛けたくなるのだろう。
相棒も、そういう交流は愉しんでいる様子。
福造を愛おしそうに撫でながら、カメラ愛好家の親父たちとの会話に相槌を打つ相棒。
やや照れてしまう福造であった。
無論、悪い気などする筈もない。

*   *   *   *   *

深大寺のだるま市に行って来ました。
去年お世話になったダルマさんを、正月にお焚き上げしそびれてしまったので。
今年は、土日の開催なだけあって、午前中に行ったにも関わらず、すごい人でした。
ダルマを売る店の他にも、露店がたくさん並んで。
老若男女、様々な人がいて。
たくさん写真を撮りました。
去年のダルマに御礼と別れを告げ、新たなダルマさんと帰っていく。



願いを込めて新しいダルマを買う人の表情、良いです。
しかし、もっと興味深かったのが、「お焚き上げ所」。
そこは、去年の役割を果たしたダルマさんたちとお別れする場所。
小さな小屋に、ダルマさんを投げ入れるのです。

お別れ直前のダルマさん。
来る人がどんどんダルマを投入して行くのですが。
その場面が何とも面白い。

ダルマさんにお別れを言うんだよ。

ありがとう。

さよなら。



そういう、別れを惜しむ人もいれば、何の感慨もなく投げ込む人も。
面白くて、ずっとこの場所で張ってました。
すると、同志がいました。
一人は、初老の男性。
福造に気付いて、「良いカメラもってますね」って。
ねじ「この場所、楽しいですよね」
男性「うん。もっと大物来ないかな」
ねじ「あ、大物来ました」
男性「よっしゃ」
・・・
ねじ「想定外のダルマだったです。使うレンズ誤りました」
男性「ちっ、投げ入れるの早過ぎ」
そんな感じで、写真を数枚ご一緒させて頂きました。



もう一人は、Nikonのごついカメラを持った初老の女性。
女性「あなたも、随分粘ってるのね。良い写真撮れた?」
ねじ「ぼちぼちです。そちらはどうですか?」
女性「私は投げ入れてる所が撮りたかったの。でも、皆可哀想だと思うのか、投げないのよ」
ねじ「確かに。私も転がし入れました」
女性「たまに投げる人いるけど、間に合わないのよ」
二人して、買う瞬間よりも別れる瞬間のが愉しいという意見で一致。
お相手、ありがとうございました。