番外編:宿坊愛好家

もう少しだけ引っ張ります、京都旅行編。
私は、京都に行く際、宿坊を利用します。
宿坊とは、寺院が参拝客や旅行者の為に作った宿泊施設です。
最近では、関連本とかもあるみたいで、密かなブームなんでしょうか。
「寺に泊まる」と聞くと、大層に感じるかと思いますが、宿坊と言っても色々あります。
部屋に鍵もなく、相部屋も当たり前、当然風呂もトイレも共同で何もない畳の部屋に泊まる「いかにも」な宿坊。
オートロックで、エアコン完備、布団の上げ下ろを自分でする程度で、普通の旅館と大差ない宿坊。
朝のお勤めに参加出来る宿坊、精進料理が食べられる宿坊など、特色も全く違います。
共通して言えることは、簡素な宿なので、宿泊代が相場よりも安いということでしょうか。



私が宿坊を初めて利用したのは大学卒業直前のこと。
ふと、一人旅に出ることを思い付き、色々調べている過程で宿坊なる物があることを知ります。
どうせなら、変わった体験をしてみたい。
初めて行った宿坊は、新撰組伊東甲子太郎が屯所を構えたことで有名な「月真院」。
ここは、いかにも「寺」な宿坊でした。
泊まった部屋は3畳間でしたし。
シーズンオフに行ったので、宿泊客は私一人。
住職はやや強面でしたが、愛犬のレトリバーが可愛かった。
緊張だらけの初宿坊でしたが、普段は味わえない体験に感動。
それから、宿坊は京都一人旅の定番になったのでした。



2回目に訪れた宿坊は「妙心寺大心院」。
若冲の「動植綵絵」を観に行ったとき。
ここも、どちらかというと「寺」でした。
やはり5畳間ほどの何もない部屋。
部屋の前には素晴らしい庭があり、とても良い場所でした。
朝食に精進料理が出てきたのですが、とても美味しかったのを覚えています。
寺の行事により、朝のお勤めに参加出来なかったのが心残り。



今回の旅行では、2箇所の宿坊を利用しました。
まずは、長楽寺で営んでいる宿坊「遊行庵」。

実は、ここに訪れるのは2回目。
前回利用して、とても良かったので。
ここは、宿坊初心者にお勧めです。
部屋に鍵も付いているし、ユニットバスもトイレもあります。
部屋も広いし、旅館と殆ど変りません。
宿坊としては、若干宿泊料が高いのですが、祇園のど真ん中という立地を考えれば安いです。
部屋には、「旅の思い出」のノートがあり、それを読むのも楽しいです。

意外と、一人旅をしている女性が多いみたいです。
色々と共感出来る節とかもあって、テレビがなくても時間がすぐ過ぎて行きます。
そして、皆この宿坊が気に入って満足しているというのが伝わってきます。
中には、こんなページもあって面白い。



申し込めば、24時間写経が出来る部屋もあります。
半畳ほどの狭い部屋。

小さな仏様を目の前にして、線香を焚きます。
カセットから流れるお経を聞いて心を落ち着かせます。
自分で墨をすって、写経開始。
般若心経であれば、1〜2時間。
書道をするのも久しいですが、こうして一字一字を丁寧に書くことなんて、最近では全くしていないことに気付きます。
書き順が解らない字の多さにも、若干ショック。
日々、色々なことを考えて悩んで。
何も考えないで、ひたすら字を書く。
とても贅沢な時間だと思います。
でも、私は出来た人間ではないから、雑念が浮かんでは消えての繰り返し。
修行が全然足りていません。
その写経は、翌朝のお勤めで祈祷してもらえます。


朝のお勤めは7時から。
「遊行庵」から少し離れた「長楽寺」に向かいます。

緑に囲まれた静かな寺です。
そこで、住職さんから寺の由緒などの丁寧な説明があり、一緒に読経します。
読経が終わると、寺を案内して頂くことが出来ます。
とても気さくで優しい住職さん。
記念に1枚撮らせて頂きました。

慣れないブロニカで、手ぶれしまくり。
申し訳ございません。



朝のお勤めが終わると、朝食です。
おかみさんが手間暇掛けて作ってくれる朝食。
初めて食べたとき、物凄く感動しました。
特に、お味噌汁とふろふき大根。
私が認定する、世界で最も美味しい朝食。

実は、この朝食の味が忘れられなくて今年もやって来たのです。
おかみさんにそのことを話すと、とても喜んで頂けて。
再現は到底出来ませんが、料理のコツを教わりました。
そして記念に1枚。

本当、私の馬鹿。
今度は絞りを間違えた。
本当に、この宿坊が大好きです。
多分、京都に行く度に利用するんだろうな。



そして、もう一箇所は、初めて利用する宿坊。
西陣近くの「妙蓮寺」。

ここは、いかにも「寺」な宿坊です。
宿泊したのは、この建物。

入ると、こんな感じです。

ここは、相部屋にはならないものの、食事なし鍵なし風呂なしトイレ洗面所は共同。
風呂は近くの銭湯を利用します。
しかし、銭湯利用券込みで3800円という低価格は魅力的。
部屋は、エアコンもありますし結構快適です。

ただし、障子を開ければ一面お墓です。
いかにも「寺」ですが、そこが面白いのです。

洗面所は懐かしい感じ。

石庭は見事です。


銭湯は、有名な船岡温泉に。

文化庁登録有形文化財にも指定された由緒ある唐破風造の建物だそうで。
内装はレトロなマジョリカタイルから始まり、脱衣場の天井に彫られた鞍馬天狗や透かし彫りの欄間など、素晴らしい。
外国の旅行客が多く来ていました。
妙蓮寺で、洗面器と石鹸を貸してもらえるのですが、それを見たおばちゃんに「あなた、寺の人?」と聞かれたりして、宿坊の説明からはじまり世間話に発展。
そんな、現地の方々との触れ合いも楽しいものです。



朝のお勤めは早く、5時半から。
立派な御堂の中で、お経を聞きます。
落ち着く。
京都に来て良かった、楽しい旅だったなと。
帰る前には、寺の事務員さんとお話し。
とても気持ちの良い方で、ほっこり笑顔に。
ここでも1枚。
今度はデジカメだから安心。

ナイスショット、頂きました。
ここも素敵な宿坊でした。
どんどん、再訪したくなる宿坊が増えていく。



今度は、奈良の宿坊とかにも行ってみたいです。
あとは、今回予約が取れなかった女性専用宿坊の「鹿王院」や「妙顕寺」にも行ってみたいです。
相部屋になったことがないので、それもまた楽しそうだなと。
宿坊、本当にお勧めです。